ササオ シンタ
SASAO Shinta
笹生 心太 所属 体育学部体育学科 体育理論(医学を含む) 職種 准教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2023/12 |
形態種別 | 日本学術会議協力学術研究団体学会誌に掲載された論文 |
査読 | 査読あり |
標題 | スポーツメディアに見られる「ナショナリズムの言説」:ワールドベースボールクラシック2023に関する新聞報道に着目して |
執筆形態 | 単著 |
掲載誌名 | 体育学研究 |
掲載区分 | 国内 |
出版社・発行元 | 日本体育・スポーツ・健康学会 |
巻・号・頁 | 68,625-641頁 |
著者・共著者 | 笹生心太 |
概要 | 本研究は,ナショナリズムを構築主義的に捉える立場から,スポーツの報道が,人々に対して「自分はこのネイションの一員である」という想像力を喚起する様子を分析した.具体的には,日本国内における WBC 2023 に関する新聞報道に着目して,そこにどのような「ナショナリズムの言説」が生産されているのかを明らかにした.本研究では,3 種の「ナショナリズムの言説」に着目した.
まず①「我々」言説については,日本人選手/日本代表チームのプレースタイルに関する論評に着目した.WBC 2023 の大会期間前には,「スモールベースボール」という言葉による論評が支配的だった.この「スモールベースボール」とは,日本人選手の身体能力の低さを前提とし,ホームランを狙うのではなく単打と積極的な走塁によって得点を積み重ねるという攻撃スタイルである.しかし大会を勝ち進むにつれて「スモールベースボール」に関する論評が減り,代わって日本人選手の「パワー」が強調されるようになっていた.また同時に「まとまり」が強調され,それを補強するエピソードも多く報じられていた. 次に②「他者」言説については,対戦相手のネイションをステレオタイプ化する論評を探した.しかし,英語圏で見られるような自他の象徴的境界線を引く表現や,「他者」に対するむき出しの憎悪的表現は見られなかった.だが日本の報道に「他者」への偏見がなかったわけではない.日本の WBC 2023 に関する報道では,安易に他競技の特徴を持ち込んで特定のネイションをステレオタイプ化したり,イタリアやメキシコといったネイションをラテンというきわめて広範な地域的特性から安直にステレオタイプ化していた.またそうしたステレオタイプ的な論評は,一般紙よりもスポーツ紙に多く見られる傾向があった. そして③「内なる他者」言説については,WBC 2023 の日本代表チームに選出されたラーズ・ヌートバー選手に関する表象に着目した.大会期間前から大会期間中の間,彼がひたむきさやガッツのような「日本人らしい」プレースタイルを有していることや,様々な面で日本文化に馴染もうとする姿勢が好意的に報じられていた.そうした論評は,彼には日本代表チームに加わる道徳的資格があるということを強調するためのものであり,「侍」という表現をもって彼に太鼓判を与えていた. |
researchmap用URL | https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/68/0/68_23050/_article/-char/ja/ |